宮部みゆき「名もなき毒」

名もなき毒

名もなき毒

どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。
財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、
トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、
私立探偵・北見のもとを訪れる。
そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。

宮部さん、ひさしぶりの現代モノ。「誰か」の続編です。
でも、この作品だけでも充分楽しめます。
いやぁ、しかし、うまいもんですねえ。
絶妙な人物配置、洒落た会話、流れるような構成
それに社会問題をからめているんですが、
資料を並べただけの付け焼刃ではなく、一歩も二歩も踏みこんで
しかし、退屈にならず、ちゃんとエンターテイメントになっています。
タイトルにもある「毒」は連続無差別毒殺事件の「毒」でもありますが
別のかたちの「毒」でもあるんですねえ。
最初の「毒」よりも考えようによっては、より強力かも…。
そんな邪悪な話ですが、最後まで宮部さんならではの「救い」があり堪能できました。
模倣犯」のように派手な話じゃないので
年末のベストの上位には入らないかもしれませんが
個人的には今年のベスト。
去年の私的ベスト1も宮部さんの「孤宿の人」だったので、
二年連続かもしれません。
5点(5点満点)