池井戸潤「空飛ぶタイヤ」

空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ

トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。
タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも…。
自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族…
事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、
家族・仲間とともにたったひとつの事故の真相に迫る、果てなき試練と格闘の数か月。

実際にあった事件をベースにしていますが
ただの事件レポートに終わることなく
とっても面白いエンターテイメント小説に仕上がっています。
中心となるのは、事故を起こした運送会社の社長。
そこにトラックを製造した三菱自動車…じゃなかった、ホープ自動車
そのメインバンクである東京三菱銀行…でもない、東京ホープ銀行の
同族企業間のかけひき、金融施策、会社内の人事や昇進などが
絡んでくるあたりは著者お得意の分野でしょうか。
そのあたりの面白さも手伝って二段組500ページのボリュームも
意外なほどスムーズに進んでいきます。
浪花節的な泣きの場面(褒め言葉です)も随所にあり
殺伐となりがちな話に、柔らかな雰囲気を与えているのにも感心。
事故の被害者がほとんど登場しないのは、
やはり実際にあった事故だからでしょうね。
4点(5点満点)