貫井徳郎「空白の叫び」

空白の叫び 上

空白の叫び 上

空白の叫び 下

空白の叫び 下

自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している久藤美也。
頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城拓馬。
両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている神原尚彦。
この3人の中学生が殺人者になるまでを、
その内面を克明にたどりながら描く。
その3人が同じ少年院に収容されて出会い
不思議な連帯感が生まれる。
少年院を退院した彼らはそれぞれ自分の生活を取り戻そうとするが、
周囲の目は冷たく、徐々に行き場をなくしていく。
そして、再び3人が出会う日がくる。
少年犯罪を少年の視点から描いた、新機軸のクライムノベル。

上下巻あわせて1200ページ弱。
しかし長さを感じさせない濃密な物語でした。
どこにでもいる普通の中学生が殺人を犯すまでを語るには
これぐらいの分量が必要だということでしょう。
二部の少年院での生活は衝撃的。
実際にもこんな生活なのだろうか?
しかし、下巻に入って雰囲気は変わる。
岡嶋二人ばりのエンターテイメントかと思いきや
それには主眼を置いてなく、
その後は贖罪ということにテーマは移っていく。
そして三者三様のラストへ…。
ただ、下巻に入って起こす事件が、わたしには
あまりリアリティがあるようには感じられなかった。
ラストもやや不満が残るかなぁ。
4点(5点満点)